小さいけど大きなこと。
【共感】
昼下がり公園でベンチに座った。
下を見るとアリが列を成している。
それは間隔をきちんと保ちながら、少しづつ移動していく。
アリなんて久しぶりに見たな。
セミの鳴き声が心地いい。しばらくじっと眺めていた。
やがて、スーツを着た男性が少し離れて隣に座った。
僕の目線がアリから彼へ少しだけ上がる。
彼は手提げカバンを横に置き、ため息をひとつしながら下を向いた。
アリは彼の足元ももちろん通り道だ。
僕はまた目線を戻した。アリは何倍もの大きい物をくわえ足早に歩いている。
男性は大きなため息をし、足早に去って行った。
彼の見ていたものはアリではなく携帯電話の画面。
まあそんなもんだ。
ベンチを後にして数歩。
ママー見て アリしゃんだよ
背後から嬉しそうな男の子の声が聞こえた。
思わず微笑んだ。